高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

高齢者がご飯を食べない5つの理由と対処法

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1.加齢にともなう食欲の減退

 

高齢者の37%が低栄養状態35%が低栄養の予備軍、合計72%が栄養問題を抱えるという研究調査があるほど、高齢者になると細くなった食の為に低栄養状態に陥りやすいです。高齢者になると健康的な食生活を意識して、低カロリーの食事を摂るようにする方もいますが、このような生活の為に低栄養状態に陥るのはなんとも皮肉です。低栄養状態に陥るとどんどん食欲が減退して身体はやせ細っていき、運動機能の低下によって寝たきり状態になってしまうことも多くあります。

 

高齢者の食欲が減退し、食べる量が減ってしまうと恐ろしいことが起ります。若い人よりも筋力と免疫機能が弱い高齢者は、十分な栄養摂取ができないことで、転倒しやすくなったり、持病が急激に悪化したり、床擦れや骨折などの病気やけがの回復も大幅に遅れることもあります。このような悪いサイクルのために高齢者の健康寿命は大幅に縮み、10年以上に及ぶ長くてつらい介護の生活が始まってしまいます

 

2.高齢者が食べなくなった原因を考えて対処する必要がある

 

今元気な高齢者にとっても、今は介護が必要な高齢者にとっても、おいしく食べて元気になることは幸せそのものです。また、その幸せこそが身体的にも元気な老後を過ごせる源になります。高齢者になると病状や体調、精神的なストレス、認知症など、様々な原因により食べることができなくなります。その主な原因と対処法について簡単に紹介します。

 

①ターミナル期に入ったことによる食欲減退

 

人は終末期に入ると必要な摂取カロリーと水分量が減ります

ご家族はあくまでも弱っていく高齢者の家族に、少しでも元気になってもらいたくて、また喜んでもらうために食べ物を食べさせたり飲み物を飲ませたりと熱心に努めます。

 

しかし、ご逝去間近になって無理やり水分や食事を摂らせることで、逆に息を引き取る際に苦痛に襲われる上で死後ご遺体から消化しかけの飲食物と唾液が溢れ出るケースが多く報告されています。介護の現場では、これを「(飲食物に)溺れる」と表現するほど、その様は無残なものです。人間は死を間近にすると鎮痛効果のある脳内ホルモンが多く分泌され、死の苦痛にも耐えられるようになりますが、無理に飲食を強いられることで、その死に備えた鎮痛機能が働かなくなるのです。

 

その為に、終末期の高齢者の食欲がないのは、安らかな死を迎えるために準備段階に入ったと認め、認識する必要があります。ご家族にはつらいことでしょうが、医師により余命が少ないと判断された場合は無理に食べさせようとせず、本当に食べたいと思うものを少しずつ味見させたほうがよいでしょう。

 

 

②認知症による食べ物への認知低下

 

認知症が進行すると、そもそも「食べる」こと自体を忘れてしまい、食べ物が食べ物であることを認知できない場合があります。この場合は食べる前に食べ物を目でちゃんと認識できるように見せて食べ物を認知させるところが大事だともいわれます。

 

その為に横になったまま、口まで運ばれる食べ物が見えないと認知症の高齢者とはいえ「異物が口に入ろうとする不安と恐怖」がある可能性があるので、できる限り背中を起こした姿勢で食べ物をみて認知し、少しずつ食べさせることがよいでしょう。

 

 

③食べなければならないといったストレスによる食欲減退

 

実際にどうしても食欲が湧かないけど、家族など周りに人がすごく食べてほしいということでつらい思いをする高齢者が多いです。食べたくないのに食べさせられ続けると、つらいのは若い人も高齢者の人も同じ。やがて食べ物を見るだけでも吐き気がすることもあります。

 

高齢者の場合、バランスの良い食事も、病気に配慮した食事も大事ですが、それよりも食べたい意欲を失わないことが最も大事です。米とみそ汁のような典型的な食事にこだわる必要もありません。スナック菓子でも、アイスクリームでも、コンビニのプリンでも、食べたいものを少しでも口にしながら食欲を失わないようにすることが大事です。

 

また、ご飯を食べて元気にならなければならないという家族の強烈な気持ちも少しだけ抑えて、高齢者本人が食べたくないというのなら、医師との相談の上であえて2-3日絶食してみることも良いです。絶食を数日続けたところで、逆に食欲を引き出すことにつながったりもします。絶食後の食事も、食事でなくデザートや飲み物、アイスクリームなど、軽い食べ物から始めたほうが効果的です。

 

 

④口の渇きによる食道の痛み

 

高齢者によくある症状の一つが、唾液の分泌量が減ること。つまり、口の中がカサカサに乾いてしまう症状(口渇ともいいます)です。口の中が乾くと食べ物の味が感じにくくなり、食欲が減退します。また、口が乾くと口腔内の環境が悪化し、悪臭もしやすく声も出にくく、乾いて割れそうになった喉の奥が飲食物を飲み込むときに痛かったりして食事そのものが嫌になったりもします。このような場合は適度な口腔ケアと口腔リハビリ、水分補給が必要です。地域の訪問歯科などに相談してみることをお勧めします。

 

 

⑤病状、服薬による吐き気

 

特にがんの患者は吐き気が強く、様々な病状や加齢のせいで味覚の障害が生じたり食べたい気持ちが薄れたりすることがあります。また点滴を打っている間は食欲が湧かないこともよくあります。ここはお医者さんとの相談で薬を変えてみたり、短期的に食欲を増進させる薬を追加したりといった方法も考えられます。

 

 

3.食べることは生きる喜び。飲食を強いてはいけない。

 

ご家族の方々にはショックな話ですが、高齢者の食べられない理由は意外と家族が無理に食べさせようとしているからかも知れません。多くの高齢者が、おいしいものが食べられないことよりも、家族の食べさせようとする頑張りに激しいストレスを感じます。もちろん身体も弱り、病気やケガを直すためにも十分な栄養を摂る必要はあります。しかし最も大事なのは高齢者がなぜ食欲を失ったか、どうしたいのか、を考えて対応することでしょう。

 

美味しいものを食べることは人間の大の喜びです。

食べることを生きるためのツライ作業にせず、日々の喜びになれるように様々な食事の形を実践してみることをお勧めします。